―アスクルでは「エシカルeコマース」の実現を目標に掲げ活動しています。

「エシカル」という言葉には、”倫理的”という意味が含まれていますが、私たちはエシカルeコマースを、社会価値と経済価値のトレード・オン(両立)だと考えて取り組んでいます。

当社では、BtoB向け通販サイト「ASKUL」と、個人向けの通販サイト「LOHACO」の両輪で事業展開をしていますが、お客さまからも「SDGsで何かをしたい」というお声をいただくことが多々あります。

その声に応えるため、私たちのサービスを利用していただくことにより、お客さまが日常的にSDGsやサステナビリティに基づいた行動に取り組めるようなサービスを提供することも、私たちの大切な取り組みであると考えています。

 

―個人向け通販サイト「LOHACO」では多くのメーカーと協力し、商品廃棄ロス削減の取組みとして「Go Ethical」を展開してきました。

対話を通じて取り組む、アスクルのエシカルeコマースと2024年問題

昔から流通業やメーカーの中では、店頭から戻ってきた商品やパッケージデザインの古い商品など、未開封で品質上は問題なくても廃棄せざるを得ない商品の問題について認識されていました。

この問題の解決に向けて、Go Ethicalは始まりました。現在は私たちのコンセプトに賛同する様々な企業が参加し、累計廃棄削減数は約130万個()を超えました。

※2024年2月20日時点。

品質に問題のない商品を廃棄せずに、シークレットセールとして販売することで廃棄ロスの削減になり、「LOHACO」を利用いただくお客さまにおかれても、安く商品を購入していただきながら環境問題を身近に感じてもらえる、まさに社会価値と経済価値のトレード・オンが出来ている事例だと思います。

なお、セールの特売で安く商品を提供することと、Go Ethicalで商品が安くなることでは、背景や成り立ちが全く違うので、そこはしっかりと説明をしたうえで、消費者理解を得られるよう努めています。

対話を通じて取り組む、アスクルのエシカルeコマースと2024年問題

2023年5月期 統合報告書 「ASKUL Report 2023」より引用

 

―2024年問題への取り組みの一つ「LOHACO」の「おトク指定便」はどういった内容となるのでしょうか。

対話を通じて取り組む、アスクルのエシカルeコマースと2024年問題

取組み自体は非常にシンプルで、Yahoo!ショッピング内で展開している LOHACOは 5の付く日のご注文のポイント倍率が高いため、ご注文を多くいただくのですが、受取日を数日遅い日付に指定していただけばPayPayポイントを付与するというというものです。

これを物流側の視点で見ると、5の付く日を起点に、出荷しなければならない荷物がたくさん生まれる一方で、翌日以降も継続的に通常通り注文が入ってきます。ただ、供給能力=商品の出荷能力には限界があるため、需要(注文)と供給(出荷)のバランスが崩れてしまい、5の日に大量に注文された商品は6日だけでなく7日・8日までかかり、その結果、6日・7日・8日に注文された商品も出荷できなくなり、次々に後ろ倒しになってしまいます。

そこでLOHACOでは、ご注文自体はお得な日にしていただいたうえで、注文の配送日を柔軟に設定していただく、おトク指定便を提案しています。

お客さまは、メリットとしてポイントの提供も受けながら、ドライバーの負荷や物流センターの問題にも自然と貢献が出来る仕組みとなります。現在、LOHACOでは5の付く日の注文の約50%でおトク指定便をご利用いただいています。

 

―現在社会的課題となっている物流の2024年問題について、消費者に知っていただきたいことを教えてください。

物流現場で言われている一番大きな論点はドライバーの労働時間で、特に深刻なのは長距離輸送の領域となります。

従来は、例えば仙台→大阪で10tトラックの長距離輸送をする際は、非常に長い労働時間となり、時には仮眠を含む休憩時間も取れないなかで、荷物を運ぶことが常態化していました。ここに規制が入り、しっかりと休憩時間を取ることが義務付けられると共に、長距離輸送の場合は2交代をすることも義務付けられました。

その結果、走ることの出来るドライバーや車両の数が足りなくなり、物流の供給能力が需要に追い付かなくなってしまう、というのが2024年問題となります。

こうした社会背景を踏まえて、まずは消費者の方に心がけていただきたいことは、なるべく無駄の無い買い方をしていただくことだと考えています。また、再配達をお願いすることなく、しっかりと1度で受け取っていただくことは、この問題に直結する解決方法になるかと思います。

また、アスクルとしては、いわゆる「ちょこちょこ買い」を減らし、なるべく1回の買い物で全てのお買い物を満たしてもらう「まとめ買い」が物流の労働力を有効活用できるお届けの仕方だと考えているので、まとめ買いを今後とも強く推奨していきたいですね。

例えば、LOHACOでは「まとめ割」を提案し、「日用品」「飲料」「化粧品」「洗剤」など、指定されている対象商品グループを買いまわることで、割引が適用となるサービスも提供しています。

加えて、2024年問題では「送料無料」と表記することの是非も議論されていますが、アスクルでも「当社負担」と表記を改め始めています。また、配送料が当社負担となる金額も、1,000円以上から2,000円以上の注文に変更いたしました。

消費者の皆さまにおかれては、注文をすれば手数料を払うことなく無料で商品が届く状態は自然ではない、と認識していただくことが大切かと思っています。

 

―2024年問題への対応に関わる、アスクルとしての今後の構想やお取組などがございましたら、合わせて教えていただければ幸いです。

当社のようなeコマース(インターネット通販)事業者は長距離輸送ではなく、消費者からも距離的に近い、全国の物流センターからの出荷が多くなります。このお客さまへ商品を届ける「ラストワンマイル」と言われる領域を中心に、ドライバーの労働環境改善や、テクノロジーやDXの力を使って労働生産性の向上に取り組んできました。

今までもテクノロジーやDXの力を使って労働生産性を上げることにより、物流センターや配送作業の効率化を図ってきましたが、今後もそこは足を止めずに、サービスを進化させていくことは重要だと思っています。

ただし、当社では様々な工夫を試みていますが、商品の供給能力を上げていくことには限界がありますので、消費者との対話も通じながら、商習慣や買い物習慣も変えていけるよう取り組んでいければと思います。

アスクル株式会社

アスクルは、オフィスに必要なモノやサービスを「迅速かつ確実にお届けする」トータルオフィスサポートサービスの会社としてスタートし、2023年3月に創業30周年を迎えました。お客様の声や時代の変化に対応しながら、商品やサービスを進化させ、磨き込むことで創業以来、着実な成長を続けています。そして、そのフィールドはお客様のくらしの中へと広がっています。

 

 

対話を通じて取り組む、アスクルのエシカルeコマースと2024年問題