NPO法人Mブリッジ エシカル推進チームが思う"エシカル消費"とは?

"おかげ様"の気持ちを持ち、商品に想いを馳せ、地域の人や環境に優しく寄り添った商品を選択しようとすること。

これまでの活動を教えて下さい。

Mブリッジは、三重県松阪市を拠点にコミュニティビジネスやCSRの推進など地域活性化に取り組んでいるNPO法人です。エシカル推進チームは、「三重の豊かな自然を後世に残していくために、日常生活からできる身近なアクションを消費者に伝えたい」と2012年に発足しました。「三重県」×「エシカル」を組み合わせた「ミエシカル」を合言葉に活動しています。
まず、地元の方が身近にあるエシカルが地域にどのように良いのかを知ることが大切だと考えました。そこで、初年度に県内に隠れているエシカルな商品・スポットを紹介するガイドブック「Miethical-ミエシカル-」を発行。
翌年2013年は、エシカルな地域情報誌の作成と"三重の本物を巡る旅エシカルツアー" を実施。製造者の想いと商品ストーリーを消費者に伝えたいと、人や環境や社会に配慮した商品を作っている地元会社の見学を行いました。2017年には、より地域に根差したエシカル消費を推進したいと、その指針になる「三重のローカルなエシカル基準」を作成。地元の有識者を集め、三重の特徴や課題を見つめつつ、消費者が風土にあった商品、営み、課題を解決する仕組みを持つものを見つけられるようなガイドラインとして構築しました。

ガイドブック

なぜ、ローカルなエシカルが大切なのですか?

誰しも自分が生まれ育った町の景色が残っていて欲しいと思うのではないでしょうか?「ローカルなエシカル=地域を応援する人や環境に優しい消費選択」ができたとしたら、自分の大切な町を自分の手で残すサポートができたり、元気にできたりする力になれると考えます。
普段、陳列された商品をデザインや価格などから何気なく選ぶ人が多いと思います。ですが、商品を購入することは、お金を投じること。すなわち、商品や企業を応援する投資です。だからこそ、誰がどんな風に作ったか、それが作る人や使う人、環境や地域に優しく配慮されているか、地元で作られたか、と商品に想いを馳せることができたとしたら、ローカルなエシカル消費を始めるきっかけになると考えます。

ドライフルーツ

地物野菜を選ぶ、地域食材を使って授産施設で作られたジャムやドライフルーツに変える、子どものおもちゃを三重県産木材を使ったものにするだけで、地産地消・地域活性化に繋がります。また、生活という点では、ペットボトルや牛乳パックなどゴミの分別を行い資源を有効活用する、生ごみをコンポストで堆肥に変える、個包装の商品の購入から量り売りを選ぶなどを心掛けるだけでも手軽に取り組むことができます。
少しずつでも暮らしの中に取り入れ実践していくことがエシカル消費を加速させる1つの糸口になると考えます。

いま取り組んでいる・注力していることは?

「地域を知り、愛着を持ち、地域が元気になれる(課題解決に繋がる)選択ができる消費者を増やすこと」です。

ガイドブック「Miethical-ミエシカル-」の制作時に県民に情報提供を募ったところ、1か月間で179件も集まり、「こんなにもエシカルが溢れているんだ」と知りました。しかし、取材を通して、商品や産業が温暖化の影響で失われつつあること、農林水産や伝統工芸品が後継者不足や人の流出で伝承できないことといった問題がある一方で、県民の危機感が足りないことを痛感しました。そこで、地域で作られるエシカルな商品を介して課題を見つめ、日々の行動から地域社会を守り受け継ぐために今の自分たちに何ができるのかを伝える必要があると感じました。

こうした背景から現在実施しているのが、①エシカルオンライン講座、②オンライン商品レビュー会、③食品ロス削減を目指す商品開発です。

①エシカルオンライン講座は、エシカルな活動をしている団体や企業から三重県の課題・取り組み・工夫した点などを学び、自分の暮らす地域の問題を理解し、エシカルの必要性と意識啓発を行う講座を開設しています。

オンデマンド講座_画像

②オンライン商品レビュー会は、製造元と消費者を繋ぎ、伝え、広げています。エシカルな商品を製造する地元企業と地元消費者がオンラインで顔を合わせ、製造側からは2017年に作成したローカルなエシカル基準を基にどんな課題から生まれた商品なのか、どこでどんな風に作られているのかなどのストーリーを話し、消費者からは使い心地などの感想と商品へのリクエストを伝えます。 このレビュー会を通じて、製造側は商品がいかにエシカルで地域に役立つのかを見直すことができ、消費者は普段知ることのできない地域産の商品の背景や良さを聞くことができます。それらをSNSで発信し広く伝え、地産地消を促進しています。

オンライン商品レビュー会_実施風景

③食品ロス削減を目指す商品開発では、「美味しく食べてSTOP食品ロス」をコンセプトに、地元の農業科の高校生が作った規格外米と地元の農作物直売所からでるもったいない廃棄野菜を再利用しています。消費者が地元で食品ロスがあることを知り、関心を持ち、食べることで削減に参加できるという取り組みです。また、地元ででた食品ロスを地元で削減するため焼却や移動にかかる環境負荷にも配慮しています。さらに、開発・製造では、子育てママを起用し、社会復帰を目指す子育てママが持つ自信喪失感や不安に寄り添い、家庭を優先しつつもゆっくりと社会と繋がり復帰できる場を提供しています。

ベジッフル
ベジッフル_製造風景

今後の構想・取り組みたいこと・野望などは?

ローカルなエシカル消費が当たり前な県にしたいと思っています。また、ミエシカルのような取り組みが他の地域に広がってほしいです。地域に根差したローカルなエシカルは、三重県に特化したものではなく、どの町にもその地域ならではの産品や伝統工芸品、課題を解決する環境配慮型商品やサービスなどは存在します。それらをいかにエシカルと捉え、伝え、消費に促すことができるかなのではないかと考えます。
これから地域に根付いたエシカル推進を図りたいと考える方に、10年間のミエシカルの取り組みを伝えることで、各地域で風土に寄り添ったエシカル消費が進み、元気でサステナブルな社会が広がることを願っています。

NPO法人Mブリッジ エシカル推進チーム 統括マネージャー 安原智子

エシカルコンシェルジュ
エシカルに関する講師
*現在、7歳・4歳・0歳の男の子を育てつつ、事業を展開している

 

安原智子