●いま取り組んでいる事業について教えてください

-金’糸’継ぎアップサイクル-をテーマに、西陣織などに使われてきた「金糸」という糸と役目を終えて捨てられてしまうヨットの帆を使って、バッグやアクセサリーを製作・販売しています。全てのアイテムに、福祉作業所のクリエイターが金糸を使って作った、世界に一つのアート作品「金継ぎタグ」が輝きます。また、売り上げの1%は金糸にも使われており、日本の伝統工芸に欠かせない漆(ウルシ)の国内での植樹活動に寄付しています。

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● この取り組みに至った背景は?

私は300年以上前から金箔を生産・販売する家業の傍らで育ち、伝統工芸の衰退に伴い役目を失い続ける「材料」の新しい活躍の舞台を作って、その職人技を未来に繋いでいきたいと考えていました。そのなかで大学2年次に、漆と金箔を重ねた和紙を裁断して作られる金糸という糸に出会い、その美しさと職人技に魅了されると共に、職人さんが減り続けている現状を知りました。同時期に父の趣味であるヨットの帆は、破れたらそのまま廃棄されてしまうことを知り、そんな帆を金糸で「金継ぎ」して自分が持ちたいものに生まれ変わらせれば、金糸の美しさを多くの人に知ってもらえるのではないかと考えたのがきっかけです。

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金糸と父の知り合いから始めてもらったヨットの帆

● 事業を進める中で大変なこと、楽しいことは?

自分は不器用で素敵な商品をデザインすることも、それを形にすることもできませんでしたが、たくさんの方の力を借りてここまで来ることができました。特に、肝となる金糸の生かし方を悩んでいた際に、いきなり電話をしたにも関わらず温かく話を聞いてくださり、今も素敵な手仕事を続けてくださっている福祉作業所の方々には感謝してもしきれません。日々悩むことも多々ありますが、製作や販売を通して想いを共有できる素敵な仲間やお客様と出会えることが大きな原動力になっています。

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● 今後の構想・野望などは?

事業を始めて2年余、少しずつ金糸を購入してアイテムを作り、お客様にお届けすることができましたが、まだまだ金糸職人さんや後継者の方の生活を支えるには程遠いです。今後はブランドとしてのモノづくりを基盤にしながら、金糸を世界中のデザイナーやアーティストに紹介することで、現代のモノづくりに新たな価値を与えると共に、金糸にまつわる職人技を継承する、という目標を実現します。

堀灯里

2000年京都市生まれ。老舗金箔屋を営む家業の傍らで育つ。
高校1年時、豪州での交換留学を通して家業の可能性と脆弱性を認識。
2019年に早稲田大学国際教養学部入学後、文化×ビジネスをテーマに幅広く学ぶ。
2021年2月ごろに「金糸」の可能性に魅せられ、友人とsAtoを立ち上げ。
翌年に大学内のピッチ大会で審査員特別賞/事業資金51万円を受賞。
その後個人事業主として開業し、同年9月に大学を早期卒業。
現在はアルバイトをしながらsAtoを運営。

 

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