これまでの活動を教えて下さい

国立大学法人お茶の水女子大学は、1つのキャンパス内に大学、附属高等学校、附属中学校、附属小学校、附属幼稚園が近接しています。各附属校は研究校です。附属高等学校家庭科では、全国に先駆けて2011年よりエシカル教育の実践的な研究を継続して行ってきました。高校では、エシカルな企業や伝統職人、サステナブルなベンチャー企業などとの外部連携なども活用した、多様な手法を授業に取り入れています。

高校家庭科の取り組みの発展として、2015年より高校と小学校家庭科が連携したエシカルな訪問授業が開始されたのを機に、2016年にお茶の水女子大学連携研究「エシカルラーニングラボ」が設立されました。幼・小・中・高・大学の教員が所属し、校種を超えた連携をしながら、低年齢から繰り返しエシカル・サステイナブルを学ぶ研究を行っています。

いま取り組んでいる・注力していることは

「エシカルラーニングラボ」の中心的な活動として、異校種で連携した授業研究に取組んでいます。エシカル消費を学んだ高校1年生による、「児童労働とチョコレート(*1)」に関しての小学生への訪問授業もその1つです。

訪問授業では、児童労働をテーマに附属高校の生徒と対話をすることで、小学生のうちからエシカル消費についての考えを育む時間となっています。高校生も、小学生に教えることにより気づきを得て、相互に学びが深まります。また、小学校給食とも連携することで、フェアトレードチョコレートを実際の給食に使用し、さらに給食のおたよりを通して「適正価格でチョコレートを買うことが、カカオ豆を育てている人たちを支えることにつながる」ということを伝えました。

高校生による小学生への訪問授業

高校生による小学生への訪問授業

他にも高校2年生による中学生へのエシカル消費についての授業や、話し合いの訪問授業のほか、中学生と幼稚園の連携では、園児が遊びに使う毛糸を、中学生が食用色素で染めてプレゼントするなど、多岐に渡る交流を継続して行っています。

年齢の異なる他者へ学びを伝えることにより、相互に学びが深まっています。今年度は、新たな形の訪問授業も実現し、さらなるエシカルな学びを研究していきます。

(*1)チョコレートの原料であるカカオの生産地では、賃金が大人より安い子どもたちがカカオ農園で労働を強いられている児童労働の撤廃と予防が課題となっている。

今後の構想・取り組みたいこと・野望などは

2022年にお茶の水女子大学に「SDGs推進研究所」が設立され、「エシカルラーニングラボ」も関係機関として協力しています。全学をあげたフード・ドライブ活動や、大学理学部の研究室とも連携した大学生協における昆虫食フェアなど、関係の啓発活動を連携して行っています。SDGs推進研究所では、大学生も熱心に活動し、附属校への訪問や啓発ビデオの作成など行い、取組が広がっています。

SDGs推進研究所によるキックオフイベントや、企業などとのコンソーシアムでも、エシカルラーニングラボの活動などを含めてエシカルな取組を発信してきました。今後、官民学が連携した研究や社会実装の可能性を探っていきます。

葭内ありさ(よしうちありさ)

博士(社会科学)。
お茶の水女子大学附属高等学校教諭、同大学非常勤講師、同大学エシカルラーニングラボ代表。
お茶の水女子大学卒業、同大学院修了。
慶應義塾大学法学部卒業。
家庭科でサステナブル、サイエンスを題材とした授業創りや、国内外のエシカル消費の研究・啓発に取り組む。
消費者庁「倫理的消費調査研究会」委員等歴任。文科省検定教科書(東京書籍)編集委員。
NHK高校講座「家庭総合」監修・講師。

 

「葭内ありさ(よしうちありさ)