株式会社山櫻は、30年以上にわたって環境に配慮した紙製品の開発・販売に取り組んでいます。1990年代、業界に先駆けて企画・販売を開始した再生紙の名刺を筆頭に、森林資源を保護する紙製品を展開しました。近年では、持続可能な開発目標であるSDGsの達成に向け、フェアトレード認証の紙、通称「バナナペーパー」の普及にも取り組んでいます。環境保護にとどまらず、社会貢献も視野に入れた「人にも環境にもやさしい」製品づくりについて、伺いました。

業界に先駆けて、環境に優しい紙製品の普及を推進。広く社会に貢献したい。

紙製品の製造は森林資源を消費するため、弊社では事業活動における環境への負荷を身近な問題として意識していました。1990年には、業界に先駆けて再生紙の名刺を企画・販売しましたが、社外の反応は芳しいとは言えないものでした。2000年になると、いわゆる「グリーン購入法」の制定をきっかけに「エコな製品」への需要が高まり、再生紙以外に、竹やさとうきびのしぼりかすなどの非木材などを使った製品も取り扱うようになりました。

ところが、2008年に古紙配合率偽装問題が起きました。製紙メーカーが「100%古紙」をうたって販売していたものが、古紙が全く含まれていないか、わずかしか含まれていないことが発覚したのです。当社の再生紙名刺の配合率も実際は異なっており、大きな衝撃を受けました。この問題をきっかけに、当社は「本当に環境のことを考えるとはどういうことか」を強く意識し、以降、森林問題だけでなく社会課題を包括的に考えて事業活動を継続しています。

社会課題の解決につながる製品の一例として、人にも環境にも配慮したフェアトレード認証の紙「One Planet Paper® (ワンプラネット・ペーパー/通称バナナペーパー)」があります。バナナペーパーとは、アフリカのザンビアで生産されたオーガニックバナナの茎の繊維に、古紙または森林認証パルプを加えて作られた紙です。この原材料の製造は村に雇用を生んでおり、その仕事は従業員の日々の食事や健康、教育などを支え、貧困問題の解決につながっています。また、安定した就労は密猟の減少にも貢献しており、野生動物の保護や国立公園などの周辺環境の維持という好循環を生み出しています。現地からは「バナナペーパーのおかげで子どもを大学に行かせることができた」「この仕事を誇りに思う」といった声が寄せられており、日本の私たちも「Made With Zambia」の気持ちで日々製品を世に送り出しています。

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バナナペーパーの原料となるオーガニックバナナの茎の繊維を取り出す現地ザンビアのメンバーたち

「選択してもエシカル、選択しなくてもエシカル」な未来を目指すために

当社は、「2025年までの自社規格品の95%エシカル化」に力を注いでいます。現在、エシカル製品の開発や、パートナー企業と協力して環境性の高い原材料や再生可能エネルギーの導入などによって製造できるよう、切り替えを進めています。「選択してもエシカル、選択しなくてもエシカル」をスローガンに、意識しなくても当社の商品を手に取れば、自然とエシカル消費ができている、そんな未来を思い描いています。

また、2050年までに全事業のカーボンニュートラル達成も目標に掲げています。まずは、2023年に自社工場を、2024年に物流センターで使用する電力をすべてグリーン電力に切り替えました。さらに、お客様が手軽に脱炭素に取り組めるよう「カーボンニュートラル製品」の取扱いも始めるなど多方面から取組を深めています。

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2023年に使用電力をグリーン電力に切り替えた山櫻の「八王子の森工場」

「エシカル」の事業活動は、これまでにない製品・サービスを生み出す原動力に。

「エシカル」に関する事業活動を通じて、これまでは縁のなかった業界や人とつながることが増えています。そういった方々との交流を通じて初めて知る課題もあり、その課題解決に向けて当社ができることを考えています。例えば、これまでは廃棄されることがほとんどであったおからから作られた「おからペーパー」の開発協力によって、食品ロス問題へのアプローチを試みました。

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廃棄予定だった「おから」から作られた「おからペーパー」

また、植物用ポッド「STEMN(ステムン)」の共同開発を通して、花き園芸業界における日本初のサーキュラーエコノミー(循環型経済)に挑戦しました。サーキュラーエコノミーとは、従来の3R(Reduce〈削減〉、Reuse〈再利用〉、Recycle〈再資源化〉)の取組に加え、資源の投入量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、新たなサービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動のことです。「STEMN(ステムン)」は、生花店において今まで捨てられてきた花材を原料に練り込んでいます。アレンジメント用の器として使い、鑑賞が終わった後はガーデニング用の器として二次利用もできます。最後は土に埋めることで、生分解され地球に還っていくというものです。

以上のように当社のノウハウや製品の提供、スキーム作りのお手伝いが、よりよい社会につながっていくと信じて、これからも活動してまいります。

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生花店で捨てられる花材を原料に練り込んだ植物用ポッド「STEMN(ステムン)」

株式会社 山櫻

名刺・封筒など、オフィス用紙製品を中心とした紙製品事業を軸に、Webサービス事業やプリンター事業など、紙製品以外の分野でも事業領域を拡大している。「One Planet Paper®(ワンプラネット・ペーパー/通称バナナペーパー)」の開発など、変わらない「紙」というものに、エシカルという考えを吹き込むなど、持続可能な社会へ貢献する数多くの製品を生み出している。

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